熱気球はどうやって浮いているのか
熱い空気は冷たい空気より軽い。仕組みはそれだけ。面白いのは、その差がどれほど小さく、それを使い物にするのにどれだけの布が要るかという点。
熱気球が浮くのは、コルクが浮くのと同じ理由です。自分の重さより多くの周囲の 流体を押しのけているからです。ここでの流体はたまたま空気で、押しのけた空気より 軽くなるための手口が、中の空気を温めることです。
数字は思ったより小さい
20 ℃ の空気は 1 m³ あたり約 1.2 kg あります。これを 100 ℃ まで温めると 約 0.95 kg になります。同じ気圧を、より速く動く分子で支えることになり、同じ 体積の中の分子の数が減るからです。
差はおよそ 1 m³ あたり 0.25 kg。熱気球が得ている浮力は、これで全部です。
1 m³ で 0.25 kg というのは大した量ではありません。だから気球はあんなに巨大です。 よくあるスポーツ用の気球で容積 2,800 m³ ほど(直径 17 m の球に相当)、総浮力は 700 kg 前後。ここから球皮・バスケット・バーナー・プロパンの重さを引くと、残るのは 人間 2〜3 人分です。
布が許しません。ナイロンの球皮はおよそ 120 ℃ までで運用され、素材の限界も そう上ではありません。100 ℃ から 120 ℃ へ上げても、100 m³ あたり数 kg 増える だけです。だから気球は「熱く」ではなく「大きく」作られます。
空気が変われば、気球も変わる
浮力は内と外の差で決まるので、同じ気球でも空気が違えば挙動が変わります。
- 寒い日はよく上がる。 外気が冷たいほど密度が高く、同じ内部温度でも差が 大きくなります。冬の朝は力強く、夏の午後は非力です。
- 高いところでは弱くなる。 上空ほど空気が薄いので、1 m³ あたり 0.25 kg だった差が 0.2 kg、0.17 kg と減っていきます。どの気球にも、バーナーでは 埋められなくなる上限高度があります。
- 重さがすべてを左右する。 燃料は重く、気球は飛行中に燃料を消費して だんだん軽く、そして敏感になっていきます。
なぜ一定にならないのか
球皮は大きくて反応の遅い熱の塊で、中の空気は布ごしにも、下の開口部からも、 常に熱を失っています。放っておけば気球は冷え、沈み、沈み続けます。
ですから操縦士は常に 2 つのどちらかをしています。熱を足すか、さっきの一焚きが 何をしたかを見て待つか。そして「さっきの一焚き」の結果は遅れて届きます。空気が 温まるのに数秒、球皮全体が応じるのにもっと、数トンの気球が上下の速度を変える のにさらにもっと。
この遅れが、気球の手触りをつくっています。乗り物を操縦しているというより、 効いてほしい時刻の 10 秒か 20 秒前に、乗り物へ提案を出しているのです。